ガラスはさまざまな顔を持つと、つくづく思う。
温かい顔に冷たい顔、柔らかな表情や硬質な表情、鋭さを表すこともあれば優しさにも満ち、重厚であったり軽やかにもなる──しかもすべての顔が、言い知れぬ魅力に溢れている。
私はもう30年以上も、そんな多面体の素材であるガラスに惹かれ、ジュエリーを制作し続けてきた。
現在、そんなことはもうほとんどないが、私がガラスのジュエリーに手を染めた当時、ガラスには宝石のイミテーションというイメージがつきものだったように思う。けれど知人の紹介でたまたま出かけた工房で出会って以来、私はガラスそのものに惹かれた。「ガラスでいい」ではなく「ガラスがいい」と心底、感じ入って、旅は始まったのである。
ガラスとの旅路──序にかえて より